学校・施設で対応しやすい障害者スポーツ(パラスポーツ)の種類と用具
学校や施設で導入しやすい障害者スポーツ(パラスポーツ)の種類と、それに必要な用具について詳しくご紹介します。
障害者スポーツで使用する用具には、健常者スポーツと兼用できるものもあれば、障害特性に特化した専用の用具が使われる場合もあります。この記事では、後者の「障害者スポーツ専用の用具」に焦点を当ててご紹介していきます。
※当記事においては「障害者スポーツ」と、厚生労働省の表記である「障害」にて統一させていただきます。
車いすバスケットボール
車いすバスケットボールは、もっともメジャーな障害者スポーツの一つですね。障害の重症度に応じて点数がつけられ、クラス分けされます。コートでプレーする5人の合計点数を14点以下にするというルールのもとで、迫力あるゲームが展開されます。
競技用車椅子

車いすバスケットボールで使われる車椅子は、競技のために特別に設計されています。素早い方向転換や加速、衝撃への耐性が考慮されており、一般の車椅子とは大きく異なります。
車いすバスケットゴール用床材

通常の体育館の床でもプレーは可能ですが、より安全に、そして選手のパフォーマンスを最大限に引き出すためには、競技に特化した床材が有効です。適切なクッション性やグリップ力のある床材は、選手の怪我のリスクを減らし、より質の高いプレーを可能にします。
視覚・聴覚障害者用バスケットボール
バスケットボールは、視覚や聴覚に障害のある方も楽しめるように工夫された競技もあります。

視覚・聴覚障害者用バスケットボールでは、通常のゴールではなく競技の進行に役立つ機能が付いたゴールが使われます。
- 聴覚障害者用(審判のホイッスルと連動してゴールのランプが赤く光る)
- 視覚障害者用(ゴールから異なる音が鳴って場所を知らせる機能がある)
- 聴覚・視覚障害者者用(両方の性質を持つ)

頚髄損傷者用バスケットゴール(ツインバスケットゴール)
頚髄損傷の方々は、高い位置にあるゴールへのシュートが難しいという課題があります。そこで、専用のゴールとして、高さが約1.2mに設計されたものが使用されます。この高さであれば、頚髄損傷が比較的軽く、肘や指が動くプレーヤーでもシュートが可能です。
この競技は、頚髄損傷者用バスケットゴールと正規のゴール(高さ3.05m)の2つを使ってゲームが行われるため、「ツインバスケットボール」と呼ばれています。それぞれのゴールの特性を活かした戦略が求められる、奥深い競技です。

ブラインドサッカー
ブラインドサッカーはフットサルを元にした競技で、障害の程度によって「ブラインドサッカー」と「ロービジョンフットサル」に分かれています。ブラインドサッカーはキーパー以外の選手が全盲で、ロービジョンフットサルは弱視の選手が主にプレーします。
ブラインドサッカーボール
ブラインドサッカーでは、ボールの中に鈴が入っており、音でボールの位置を判断できるようになっています。この鈴の音が、選手たちのプレーを支える重要な要素となります。

昔はいくつか製造メーカーがありましたが、現在は株式会社イミオが製造し、NPO法人ブラインドサッカー協会が販売する「SFIDA(スフィーダ)」ブランドの物のみになっているようです。
ボールサイズはフットボールと同じ。聴覚により状況が分かるように、音が出る構造になっています。
株式会社イミオ社 WEBサイト HTTPS://IMIO.CO.JP/ より
ブラインドサッカー用ゴール
通常のフットサルゴールと同様ですが、音を頼りにプレーするため、ゴール周辺の環境も静かに保つことが求められます。

サッカーゴールよりも小型のブラインドサッカー用ゴールです。
ブラインドサッカーゴールにも練習用や試合用などいくつかのバリエーションがあります。NPO法人日本ブラインドサッカー協会WEBサイトによると、縦2.14×横3.66mとなっています。
http://www.b-soccer.jp/
下記は、三和体育製販株式会社のブラインドサッカーゴールです。
シッティングバレーボール
シッティングバレーボールは、床に臀部の一部をつけたまま行う6人制のバレーボールです。サーブ、ブロック、スパイクの際には床から臀部を浮かしてはいけませんが、レシーブの際だけ短時間の臀部の離床が認められています。
シッティングバレー用 支柱・ネット
シッティングバレーボールに使用するネットは、通常のバレーボールよりも低い位置に張る必要があります。そのため、専用の支柱が使われます。ネットの高さは男女で異なります。

これがシッティングバレーボールのコートです。コートの広さは一般のバレーボールコートよりも狭くなっています。


フロアバレー(視覚障害者バレー)
フロアバレーは、視覚障害者と健常者が一緒にプレーできるバレーボールです。体育館の床にネットを張って、鈴入りのボールを転がすようにしてプレーします。
フロアバレー用支柱
フロアバレーでは、通常のバレーボール支柱と比べて、支柱のサイズや仕様、使うネット、ネットの貼り方などが異なります。これは、視覚障害のある方が安全に、そして楽しくプレーできるように工夫されているためです。

視覚障害者用のバレーネットは上下にワイヤーが入っています(通常は上のみ)。
支柱もバレーネットの上下ワイヤーを引き受けるために独特な形をしています。
フロアバレー用ボール
フロアバレーで使うボールは、公認のバレーボールに鈴が入っているものです。この鈴の音によって、視覚に障害のある選手もボールの位置を把握することができます。
ミカサ MVA400BL バレー4号 鈴入り 黄/青
メーカー:ミカサ
品番 :MVA400BL
商品名:バレー4号 鈴入り 黄/青
税別定価:4,800円(2019年度時)
販売価格:販売店舗により異なります
視覚障害者水泳
視覚障害者が行う水泳には、安全かつ効率的に練習・競技を行うための補助用具がいくつかあります。
タッチ棒

ターンをする際に、コーチがプールの壁に到達するタイミングを知らせるために使われます。選手の頭や背中を軽く叩くことで、安全なターンを促します。
スロープ・マット

プールへの出入りを安全に行うためのスロープや、プールサイドで移動する際に滑りにくいマットは、視覚障害のある方にとって非常に重要です。

水泳用スベリマットは先ほどのプールフロア同様、自力でのプールに入ることが難しい方のための補助具です。
スベリマットの上に要介護者をのせ、マットごとプールにすべらせるようにして入水します。

プール用車いす(プールサイド用)。
ステンレス製で錆びにくく、生地にメッシュシートを使用しているため水が通過します。
車椅子テニス
車椅子テニスは、車椅子に乗ったままテニスをプレーする競技です。ルールは一般のテニスとほぼ同じですが、ボールのバウンドが2回まで認められるという点が特徴です。
車椅子テニス用車椅子

車椅子テニス用の車椅子は、素早い動きや方向転換に対応できるように、軽量で頑丈な作りになっています。また、重心が低く、安定性に優れているため、激しいプレーの中でもバランスを保ちやすくなっています。
視覚障害者用テニス
視覚障害者用テニス支柱
通常のテニス支柱よりもネットを低く張れるように設計された支柱が使用されます。これは、ボールを打ちやすくするためと、音の出るボールの特性を活かすためです。

視覚障害者用テニス支柱での高さは一般のテニス支柱より低く、890mmとなっています。
視覚障害者卓球
視覚障害者卓球は、「サウンドテーブルテニス」とも呼ばれ、一般的な卓球とは異なり、ボールをバウンドさせずに転がしてプレーします。
車椅子用卓球台

車椅子でも使いやすいように工夫された卓球台です。セパレート式で、それぞれが卓球をしやすい高さに調整できるものが多くあります。また、車椅子が入りやすいように、通常の卓球台にある四隅の脚がない設計になっているものもあります。
視覚障害者用卓球台

視覚障害者用卓球はボールを転がすため、一枚板でできた天板を使用し、継ぎ目にボールが引っかからないように工夫されています。
視覚障害者用卓球ラケット、ボール

ラケットは通常の卓球ラケットと似ていますが、ボールは鈴が入った専用のものが使われます。この鈴の音を頼りに、選手たちはボールの位置を判断し、プレーします。
日本卓球 NB-1600 プラサウンドボールクリーン3個入り(ラージボール/卓球バレー対応)
メーカー:日本卓球
品番 :NB-1600
商品名:プラサウンドボールクリーン3個入り(ラージボール/卓球バレー対応)
税別定価:1350円(2022年度時)
販売価格:販売店舗により異なります
三英 12-830 サウンドテーブルテニス用ラケット
メーカー:三英
品番 :12-830
商品名:サウンドテーブルテニス用ラケット
税別定価:600円(2020年度時)
販売価格:販売店舗により異なります
卓球バレー
卓球バレーは、ボールを転がす点で視覚障害者の卓球と似ていますが、健常者・障害者関係なく、大勢で一緒に楽しめるという特徴があります。詳細については、別の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。
ゴールボール

ゴールボールは、視覚障害者向けに考案されたオリジナルの競技です。3対3で行われ、選手全員がアイシェード(目隠し)を着用し、鈴入りのボールを転がすように投げ合って得点を競います。
ゴールボール用ボール

ボールの中に鈴が入っており、選手たちはその音を頼りにボールの位置や動きを察知します。
ゴールボール用ゴール

通常のサッカーゴールと似ていますが、選手たちがボールの音に集中できるよう、ゴールの素材や形状にも工夫が凝らされています。
ボッチャ

ボッチャは、ヨーロッパで生まれた重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障害者向けのスポーツで、パラリンピックの正式種目にもなっています。専用のボールを投げ(転がし)て、的となる白いボールに近づけるゲームです。カーリングやボウリングに似た要素があり、戦略性が非常に高い競技です。


終わりに
この記事では、学校や施設で比較的導入しやすい障害者スポーツの種類と、それに必要な専用用具についてご紹介しました。
知名度が低いものも含めると、障害者スポーツの種類はかなり多く、用具の入手が難しいことも多々あります。しかし、ここで紹介したスポーツの用具は比較的入手しやすい部類に入ると考えられます。
もし、具体的な用具の導入や、学校・施設での障害者スポーツの推進についてお困りのことがございましたら、お近くのスポーツ用品店や運動器具の販売店にご相談いただければと思います。
ページ作成:東洋体機株式会社
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