鉄棒は学校や公園など身近な場所に設置されており、小さな子供から大人まであらゆる年代の基礎体力作りに役立ちます。
ここではそんな鉄棒に関する基礎知識を広く紹介していくので、個人的に鉄棒を買おうと思っているなら、鉄棒選びの前にご覧ください。
鉄棒の基礎知識
鉄棒の各部の名前と鉄棒自体の数え方
鉄棒各部の名称
鉄棒の部位には、正式な名称というものは無いようです。よく使われる呼び方程度にお考えください。
- 手で持つ部分・・・握り棒(にぎりぼう)もしくはシャフト
- 握り棒を支えるための縦棒・・・支柱(しちゅう)もしくは主柱(しゅちゅう)
- 支柱を支える斜めの部材・・・控柱(ひかえばしら)
その他には、腕・受金具・根がらみなどがありますが特に知らなくても問題はありません。
この記事では「手でもつ部分を握り棒」「握り棒を支えるための縦棒を支柱」で統一します。
鉄棒の数え方
支柱+握り棒+支柱 のセットで1欄(いちらん)もしくは1連(いちれん)と言われます。
(記事中では「欄」で統一)
- 支柱+握り棒+支柱+握り棒+支柱 なら、2欄
- 支柱+握り棒+支柱+握り棒+支柱+握り棒+支柱 なら、3欄
片側の支柱を兼用できるので、1欄目より2欄目のほうが材料は少なくなっています。
そのため2欄目以降は、増設用欄として販売され、価格も安めになっています。
その後は3欄、4欄と増えていきます。
最小単位は1欄ですが、どれだけ欄を増やせるかは特に制限はなく安全性や製造上の仕様などからメーカーが判断します。
多くの欄をつなげたいのでれば、どれだけ増やせるか、販売店もしくはメーカーに聞いてみてください。
鉄棒の種類
- 簡易式鉄棒(持ち運べる)
- 固定式低鉄棒(高さが低い。低年齢向け)
- 固定式中鉄棒(低鉄棒と高鉄棒の間)
- 固定式高鉄棒(高さが高い。高年齢向け)
- 固定式高さ調節式鉄棒(高さ調節ができ、大人向け)
簡易式のもの以外はすべて固定式です。
簡易式鉄棒
普通の鉄棒はグラウンドに固定するものですが、固定されていないものも存在します。
屋内のレクリエーションに使う場合は固定しにくいので、持ち運びできる簡易式が主流になります。
下の鉄棒は体育用品メーカーのエバニュー社が発売している(2016時点)ものです。
折りたたみ、持ち運んで使用できます。普段はコンパクトに収納しておけるので家庭用として便利です。
耐久性はどちらかというと低めで、不特定多数が遊ぶ用途には向いていません。ご家庭用としてお使いください。下記は、移動式鉄棒の一例です。
完全溶接で頑丈に作ってある製品なら、かなりの耐久性があります。
横からみると△型になっているので三角鉄棒ともいわれます。幼稚園や小学校でときどき見かけます。この鉄棒は、設置する方向が決まっていてパイプが1方向にしかないタイプです。
全ての三角鉄棒が完全溶接というわけではなく、下のように組み立て式と完全溶接の中間あたりに位置するものもあります。
低鉄棒・中鉄棒
小学生の背丈ぐらいの鉄棒で、高さは1m以下のものから、1.4m~1.5m程度までです。
主に低年齢の児童用で、シンプルな構造をしています。
低鉄棒・中鉄棒を設置するには、地面に固定する必要があります。
穴を掘り、支柱を固定してコンクリートで固めます。
耐久性は高く、適切にメンテナンスして10年以上使われることもあります。
公園や学校などの不特定多数が使う場所にも向いています。
※メーカーによっては中鉄棒という分類がないこともあります
高さは指定できるものが多いです。
もちろん鉄棒の種類にもよりますが、10cm刻みぐらいで高さの指定ができることが多いですね。
注文時に指定して必要な高さにカットした状態で納品してもらいます。
低鉄棒もいろいろな種類があります。支柱の径や色、素材、仕様など景観や利用者層にあうものを選べます。
高さの指定には、GL(グランドライン)という、地面から握り棒までの高さで伝えます。
「GLから110㎝」だと地面から110㎝の高さに握り棒があるという意味です。
固定のために地中にうめる部分も含めると1.5mほどの長さになります。
2欄以上のものなら、それぞれの高さを変えることもできます。
たとえば3欄の低鉄棒であれば、それぞれの高さを120cm、110cm、100cmにするといったことができます。
高鉄棒
大人の背丈ぐらいのものがよく使われます。高さが1.4m~1.5m程度以上の鉄棒です。
小学校高学年から中高生、一般向けの高さの鉄棒です。
低鉄棒・中鉄棒と同様に耐久性は高く、公園や学校などに使われます。
こちらも注文時に高さ調節ができる場合が多いので、カットしてもらいます。
高さがあるため支柱だけでは安定性に欠けます。
それをカバーするために控柱と呼ばれる支えになる部材が必要になることもあります。
上の写真でも、控柱がななめについていますね。
”こともある”というのは、鉄棒によって違うからです。
頑丈な高鉄棒は控柱がいらないものもあります。
高鉄棒として販売されているものをいくつかご覧ください。
控柱が無いものにはいくつかのメリットがあります。
可能なら控柱がないものを選びましょう。
ただし、あまり種類は多くありません。
控柱が無い場合のメリット
- 足を引っかけることがない
- 施工がしやすい(控柱分のコンクリートが不要)
- グラウンドの端近くにも設置しやすい
下記は控柱が無い鉄棒です。(斜めになっている特殊なものですが)
控柱が無いので、鉄棒の裏側が通りやすくなっています。
高さ調節式鉄棒
その名の通り高さが調節できるようになっている鉄棒です。
ですが、一般の人はあまり見ることがありません。
高さ調節式の鉄棒は、小学校の校庭や公園に設置してはならないと一般社団法人日本公園施設業協会が定めてるからです。詳しくは「遊具の安全に関する基準」をご覧ください。
主に一部のスポーツ施設や警察学校などの子どもが安易に入り込まない場所で使われます。
高さの調節や使用に際しての注意など、構造が複雑なものほど気をつける必要がありますので
子供だけで遊ぶような施設には不向き、という判断だと思います。
競技用鉄棒
体操競技用の鉄棒です。
競技用の体育館に設置されており、オリンピックなどでも目にします。
ワイヤーで頑丈に固定されています。
価格はランクによりますが、数十万円~百万円以上はします。一般人が個人的に買うようなものではありません。
ネットショップではほとんど売られていません。運動器具の専門店にお尋ねください。当社も取り扱っています。
鉄棒の設置工事は、基本的に工務店に依頼
固定式の鉄棒はその場所に固定する工事が必要です。
穴を堀り、支柱を差し込んでコンクリートで固定します。
鉄棒を製造しているメーカーも、鉄棒を販売している店も、工事を行っていない事が多いです。
そのため工事は別途、工務店などに依頼をします。
スポーツ施設や学校での設置
施設であれば、出入りしている体育関係事業者や工務店があると思います。
そちらの担当者までご相談ください。
個人宅への設置
家を建てるついでに鉄棒も、というのは実はよくあるパターンです。
その場合、工務店に施工してもらうことになります。
鉄棒本体の納期は事前によく確認して、早めに手配しましょう。
指定の高さにカットするため、2~4週間ほどかかることがよくあります。
こういったものは受注生産品と呼ばれる納期がかかる商品なので、検討・手配は早め早めに行ってください。
DIY(Do It Yourself)のメリットデメリット
鉄棒は個人宅でも使われます。自分で設置まですべて行う人もいますが、安全性を考えると未経験の方にはおススメできませんのでお近くの工務店にご相談ください。
過程を楽しむのであれば結構なことですが、メリットと大きなデメリットがあります。
鉄棒を自分で設置するメリット
材料費が安い かもしれない
ホームセンターなどの角材を利用すれば材料費は抑えられます。
自分の時間をお金に換算すると見合わなくても、作ること自体が楽しめるならそれも一つのDIYの理由になります。
作る過程が楽しい
子供と一緒に作る人もいます。
好きなようにできる
設置場所も鉄棒の色もサイズも思いのままです。
鉄棒を自分で設置するデメリット
製品自体の安全性のノウハウが無いに等しい
握り棒の系や素材、支柱の頑丈さ、力がかかる箇所の強度計算などノウハウを積み重ねて作られているメーカー製品には遠く及びません。
大量生産のメリットを受けられない
原材料や加工など、スケールメリットを生かすことができないので結局割高になってしまうかもしれません。
施工に関しての安全性の基準が無い
施工業者はノウハウを蓄積し、安全を保証しています。
この高さなら地面に何センチ埋め込むようにする、
とか強度が足りないので根がらみ付ける、
などのコンクリートの深さや総量をいろいろ計算しているのです。
個人でやるとノウハウゼロの状態での施工になります。
PL保険も無い
メーカー製品は、たいていPL保険といわれる製造物賠償責任保険がつけられています。
製品自体の欠陥でケガをした場合に保険が下りるのですが、
DIYで作ったものではそのような保険は加入されていないのですべてが自己責任です。
もしDIYでやるのであれば、過剰なぐらい頑丈に作るのと定期的に状態をチェックするとよいでしょう。
どのようにチェックすればいいかはこの画像が参考になります。
鉄棒の事故も報告されています。
自分で作るときは、安全に十分注意してください。
検討から発注手配まで。何を買うか・どうやって買うか
設置場所、一時保管場所
まず最初に考えるべきは場所です。
どこに設置するか、です。
鉄棒はそれ自体に加えて、ある程度周りのスペースが必要です。
目安として下記をご覧ください。ルイ高社が自社基準で公開している情報ですが、参考になります。
この図面はルイ高社がカタログに載っています。
鉄棒の高さが高くなるほど、周囲に大きなスペースが必要です。
また、施工場所の下が土である必要もあります。
水道管などが通っていないかも要注意です。
そして鉄棒を設置できる幅と奥行きをチェックしましょう。
商品を受け取ってから実際の施工まで日数がかかるようなら保管場所も確保しておきます。
「組み立て前の鉄棒を置く場所がない!」と困らないようにしましょう。
使うユーザーに合った商品を探す
メーカーのカタログやWEBサイトなどでいくつか見比べ、イメージに合ったものを選びます。
- 鉄棒の高さ
- 欄数
- 設置場所に収まるか
などをチェックします
鉄棒の高さは欄ごとに変えられます。
1.2m+1.1m+1.0mで段々にもできますし、高鉄棒と低鉄棒を組み合わせて1.8m+1.0mで大人と子ども両方に対応させることも可能です。
たとえば、下記の商品は「増設用の欄」です。この商品単体では使うことができず、鉄棒と一緒に買う必要があります。
販売店に注文する
鉄棒を販売している店に注文します。
スポーツ施設に出入りしている事業者やネットの通販店でも信用できるところであればかまわないと思います。
その際、それぞれの欄の高さを「GLから〇㎝」と指定します。
その高さにあわせて切る加工を行います。
到着まで約1か月ほどの余裕を見ておいたほうがよいでしょう。
ただ、年度末は学校関係からの注文が集中するため、2~3か月かかることもあります。
商品を受け取ったら、部材の過不足や破損がないかチェックして保管場所に置いておきます。
まとめ
- 鉄棒は体作りに役立つ遊具で一輪車の練習や筋トレにも
- グラウンド隅に空いた小さなスペースも有効活用できる
- 費用も時間も短くて済むので小規模施設にも最適
追記:鉄棒の安全対策
鉄棒の設置を行う際には、まわりとの距離が十分にとられているか、地面に落ちてもケガをしにくい対策を行っているか、特に気を配って検討してください。慣れている子供でも落ちることはあります。練習時間が長くなって疲れてきたり、新技にチャレンジしようとしたときが特に危険です。
鉄棒の安全対策用クッション
一番簡単にできる怪我対策は、クッション性のある床材やマットを敷くことです。ふかふかすぎるマットを敷くと逆に鉄棒自体がしづらくなってしまうため、小学校や幼稚園ではこのようなマットがよく使われています↓
鉄棒用マットについて詳しくはこちら▼
https://seft.jp/product-genre-horizontalbarmat/
Last Update: 2021-06-01